やがて春が来るまでの、僕らの話。


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高校2年生、春。




「若瀬、進路調査の紙今日中だからなー!」

「……」

「おい、聞こえてんなら返事ぐらいしろ」



春休みが終わって2年生に進級した俺たちは、なに1つ変わらなかった。

クラス替えがあるわけでも担任が変わるわけでもない教室の中は、いつもとなんにも変わらないまま。



……だけど。



俺にはついこの間までの教室とは、全然違うものに見えていた。



陽菜がいない。


ハナエがいない。


突然突きつけられたその現実に、心が着いていけてなかった。


騒がしい休み時間でさえ、頭の中にはあの日の声だけが聞こえ続けてて……




”なんだよ、自殺って……”


”ここまで生きてきといて、今更死ぬのかよっ───!”




あの日の声が頭から離れないまま、暗いところに閉じ込められているみたいだった……



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