やがて春が来るまでの、僕らの話。



気づいたら高2の夏休みがきていた。

夏休み、蝉の鳴き声と小学生の笑い声が窓の外から聞こえてくる。


そんな声が聞こえるのに、俺の周りはまだ真っ暗なまま。


今までなら夏休みのほとんどをあいつらと過ごしていたのに、今は外に出る気もしない。


ずっと部屋にこもって、憂鬱な気分と戦うだけだ……




「あっついなー、まじで」

「……」

「アイス買ってきたけど、食う?」



大学の夏休みに入って実家に戻ってきてる律くんは、勝手に部屋に入り込んでは俺に話しかけてきた。


ほとんど無視をする俺にめげることなく、律くんはいつも来てくれた。


律くんの行ってる学校頭良いし、夏休みでも勉強で忙しいはずなのに、それでも毎日来てくれた。



「んじゃ俺帰るけど、また来るから」

「……」



どうせこの後はカッシーのとこに行くんだろうなって、そんなことわかりきってる。




律くんが出て行ったあと、部屋の窓から空を見上げた。


夏の空に浮かぶ入道雲が、ゆっくりと流れてくのが見える。



「……」



怖かった。


夏が終わって秋がきて、冬になるのが怖かった。



思い出してしまう思い出があまりに多すぎて……



陽菜が死んだ冬になるのが、怖い。



本気でそう感じた夏だった……



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