やがて春が来るまでの、僕らの話。



夏休みが終わり、秋がきた頃。


俺もカッシーも相変わらずで、クラスの中では一匹狼と化していた。



もうどれくらいかな。


カッシーとどれくらい話しをしてないんだろう。


カッシーの声を聞かなくなって、どれくらいが過ぎたんだろう。



あいつ、どんな声だっけ。



どんな風に笑うっけ。



どんなこと、話してたっけ。



なんにも思い出せねぇや。




ずっと一緒にいたはずなのに、




なんにも思い出せねぇや……







「カッシー、元気?」



相変わらずサバサバしてるむっちが、軽くカッシーに話しかけている声が聞こえた。


近くも遠くもない俺の席にその会話が聞こえてきたのは、言うまでもなくカッシーとの会話だったから。



「ねぇ、あんた大丈夫?」

「……」

「……大丈夫じゃないか」



何も答えないカッシーに肩を落としたむっちは、諦めたのかその場を離れていった。


チラッと様子を窺うようにカッシーを見たら、前よりも随分痩せている姿が見えて。



そのあとすぐ、カッシーの口が何かを呟くように小さく動くのが見えた……






「、……」







多分誰にもわからない。




俺だけにしかわからない。




カッシーがなにを呟いたのかなんて、他のみんなに聞こえる訳もわかる訳もない。





でもどうしてか、俺にはわかったんだ……







「…………死にてぇ」







カッシーがそう呟いたのが、わかってしまった……





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