やがて春が来るまでの、僕らの話。
窓の外をぼーっと見ているカッシーに俺の声は聞こえてないのか、こっちを見てくれない。
窓の外にいる陽菜と会話をしているかのように、ただぼーっと外を見ている……
「、…」
なんでもっと早く気づいてやれなかったんだろう。
きっとカッシーはずっとこんな顔をしてたのに、なんでもっと早く声をかけなかったんだろう。
なんで俺は自分のことばっかで、こいつのことを考えてやれなかったんだろう……
律くんが傍にいない今、こいつを助けてやれるのは俺しかいないのに。
「……ひで」
それは昔、小学生の頃に呼んでいた呼び名だ。
みんながカッシーって呼ぶようになって、俺も自然とカッシーになって、陽菜だけが最後まで呼び続けた呼び名。
懐かしかったのか、カッシーは静かに振り向いた……
まじで何ヶ月ぶりだろう……
カッシーと、
目が合った……
なにを言えばいいのかなんてわかんない。
どうすればこいつも俺も救われるのかなんてわかんない。
わかんないから、これしか言えない……
「……今日、一緒に帰ろうぜ」
それから俺は、カッシーを1人にしなかった。
1人にしない為に登下校も一緒にして、休みの日だってカッシーの家に入り浸るようにした。
陽菜のとこにいかないように、陽菜に引っ張られないように、ずっと一緒にいるようにした……
一緒にいてもやっぱり会話のない俺たちだけど、そんなことはどうでもいい。
なにも言葉を交わさない代わりに、俺たちは1人じゃなくなったから……