やがて春が来るまでの、僕らの話。



「…ねぇ」

「あー?もうほんと朝から無理」


柏木くんの声を無視するように、私は続ける。


「若瀬くんて、どうして彼女いないの?」


尋ねると、柏木くんが不思議そうに私を見た。


「なんで今その質問だよ」

「いや、えーと、……なんとなく?」


思い切り怪しい返事を返したあと、泳ぐように目を逸らすけど。


「………」


突き刺さるような視線を感じる。

きっとすっごく怪しまれてる。


「いないからじゃない、好きな人」

「え?」

「好きでもないのに適当に付き合うような男じゃないから、あの人」

「…そうなんだ」

「だからモテるんだろうよ」


そっか、若瀬くんはすごく真面目な人なんだな……



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