やがて春が来るまでの、僕らの話。



「お前なんで靴までロッカーに入れてんだ?」

「ちょっと色々とありまして…」

「色々?」

「カバン、見せてもらってもいい?」

「あ、はい」



ロッカーの中から赤いトートバックを出して、矢野さんに差し出した。

差し出したカバンを受け取った矢野さんは、しゃがみ込んで中を確認していく。



「…よくあるんですか?」

「ん?」

「こういうこと…」



靴が傷ついてたり売り上げがなくなったり……

この店に対して、なんとなく不信感が沸いてくる。


「いや、売り上げがなくなるなんてことは初めて、」

「え、これ…」


クマさんの声に重なったのは、矢野さんの重い声。

クマさんを見てた視線を矢野さんに向けたら、白い封筒を私のカバンの中から出したところだった。


その白い封筒の中からは、大量のお金……


え、なに……



「これ、昨日の売り上げ…」



は?



「…なんで谷さんのカバンに」



え、待って、なにが?


なんで?



「谷さん、」

「、知りません!私じゃありません!」



咄嗟に大きな声が出る。


だって、どうして私の鞄に……


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