やがて春が来るまでの、僕らの話。
「あー若瀬先生だ!」
「こんばんはー」
「こんばんはじゃないだろ。中学生がこんな時間にウロついてんな」
「塾の帰りにブラブラしてただけだよー」
「せんせー、送ってってー」
夜の10時半。
確かに中学生がブラブラしていい時間じゃない。
身元がハッキリしてない私にだって、そんなことぐらいわかるよ……
「ハナエごめん、俺こいつら家まで送ってくるわ」
「、」
若瀬くんが今守るべきなのは、私じゃない。
守るべきなのは、生徒たち。
そう、思ったけど……
「あー、この人が若瀬先生の噂のカノジョ!?」
「大学のときに知り合ったって言う、噂のカノジョだー!」
「違ぇよ。ほら、帰るぞ」
「はーい」
「、」
カノジョ、
いるんだ……
守るのは、私じゃなくて、生徒じゃなくて。
カノジョ……