やがて春が来るまでの、僕らの話。
「………」
なにも喋らなくなった柏木くんと、なにも喋らない私。
2人の間に流れる微妙な沈黙に、どうしてか思い出すのは陽菜のこと……
もっと考えたいことはいっぱいあるはずなのに。
ついさっきまで違うことで泣いていたはずなのに。
柏木くんの隣にいると、どうしたって陽菜が私に話しかけてくる……
”ひでがいなくなったら、私死ぬ”
もうこの世にはいない陽菜が、向こうでも柏木くんに依存しているように、その声が聞こえてくる……
「ハナエさ」
沈黙を破ったのは、柏木くんだった。
ポケットに手を入れて足を組んだまま、星も見えない夜空を見上げている。
見えたその横顔が、高校1年生の柏木くんと重なった。
あの頃の、まだ子供だった柏木くんと……
「ハナエ、あれから幸せだって思ったこと、ある?」
「、…」