やがて春が来るまでの、僕らの話。
【倉田side】
幸せは、誰の元にも平等に訪れるのだろうか。
俺はずっと、今もずっと、信じられずにいる。
俺の幸せの量も、あいつの幸せの量も、誰かの幸せの量も、本当に平等と言えるのだろうか?
あの子の苦しみや、あいつの悲しみ、誰かの痛み。
幸せの量なんて計ることもできないのに、その量が決まっているなんてあり得るのかなって。
どんなに有名な大学を出た人にも、どんな名誉を与えられた人にも、そんなのわかるはずなくて。
まだ高校生だったあの頃の俺は、そのことについてただ漠然と考えているだけだった。
そしてもう一つ。
不安だったんだ。
先に高校を卒業して、俺は遠くの大学へ行く。
残されたあいつらは大丈夫だろうか。
きっと大丈夫。
そう強く思えなかったのは、きっとまだ、俺自身の傷も全然癒えていなかったから……