やがて春が来るまでの、僕らの話。



「柏木くんが死んだって、陽菜に怒られるだけだよ……」

「……」

「向こうで会えたとしても、怒られてケンカになるだけ、…」



柏木くんが本当に死んでしまいそうで、


陽菜みたいに突然いなくなっちゃいそうで……



怖くて……


声が震えて……



どうにかして救い出さなきゃって、


そう思ったのに……




「……ケンカできるだけ、マシじゃん」

「、…」

「会えないより、よっぽどマシだろ…」




なにも言えなくなった。


柏木くんの陽菜への想いの大きさに、言葉なんて見つからなかった。



言葉の代わりに出てくるのは、止まらない涙だけ……




「、……やだ、」




なにも言えなくて、


涙が止まらなくて……




「やだ、……ッ、…やだ、」




心臓が、破裂しそうなくらいに痛くて……


遠くに行ってしまいそうな柏木くんを、ただぎゅっと捕まえるように抱きしめた。



どこにも行かないように、


どこにも行けないように……



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