やがて春が来るまでの、僕らの話。








家に帰る気分にはなれなくて、だけど仕事があるわけでもなくて。

ブラブラと歩く、午後の空の下。


「はぁ…」


こんなどうしようもない人生だけど、生きてさえいればそれでいいって、昨日の柏木くんを見て思った。

生きていることが、それだけで誰かの救いになるんだって、初めて知った。


私が生きていることも、誰かの救いになっているのかな……


……例え誰かの救いになっていたとしても、生きていくにはお金が必要だ。

お金が必要ってことは、働かなくちゃいけない。



「……私もう、あの職場には戻れないのかな」



例の公園のベンチでぼーっと空を見ていたら、スマホの着信音が聞こえた。

ディスプレイには、「パスタBAR」の名前。


「、」


クマさんからだって、心臓がドクドクと大きく響いた。



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