やがて春が来るまでの、僕らの話。



「あれ、ハナエちゃん?」


二学期の終業式の帰り道。

道の途中でなんとなく振り向くと、通学路を一人で歩くハナエちゃんを見つけた。

一緒に帰っていた友達集団に一声掛けて、彼女の隣に移動する。


「いいんですか?お友達」

「いいのいいの、いっつも一緒だし、たまにはね」


いつも同学年の友達と帰ってるから、こうして後輩の女の子と歩くのは少し新鮮だ。


「倉田先輩は友達がたくさんいるんですね」

「ん?んー、まぁ、そうだね」


そこで会話は終わってしまった。

なにか話さなきゃって思うけど、よく考えたらこの子のことを何も知らない。

なに話せばいいんだろうって、俺たちの関係はその段階だ。


「そういえば陽菜は?」

「柏木くんと約束があるみたいで、先に帰っちゃいました」

「そっか。志月は?」

「先生に呼ばれてて、遅くなるから先帰っててって」

「は?アイツなんかやらかしたの?」

「多分進路調査の紙を白紙で出したからだと思います」

「白紙!?んだよ、相談してくれればいいのに」


そんなことをボヤいていると、ハナエちゃんの笑い声が聞こえてきた。

え、俺なんか変なこと言ったかな?


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