やがて春が来るまでの、僕らの話。



コンコン



「失礼します」


何を言われるのかわからないまま、クマさんがいる事務室のドアを開けた。

誤解が解けたのか、それともクビにでもなるのか。


きっと呼ばれた理由は、そのどちらかだ。


「早かったな」

「裏の公園にいたので」


イスに座るクマさんが、仕事の手を止めて私を見た。


「座ってくれ」

「……はい」


緊張して、手が震える。

だってクビって言われたらどうしようって、怖い…。


「あの、」

「昨日のことを、まず謝るよ」

「え?」

「疑って、悪かった」

「、」


クマさんが、私に頭を下げている。

ということは……誤解は、解けた?


「杉内がな、昨日みんなに聞き込みをしてくれたらしくて。お前が金庫のある部屋に1度も入ってないってのを、ちゃんと証明できたんだ」

「、…」

「だから犯人は別にいるって、俺も納得できた」



杉内くん、が……



「本当にすまなかった」

「あ、いえ、」



じゃあ私、またここで、



「ただ……」

「、」



だけどクマさんの話しには、続きがあった。


「やっぱりこの店で働いてもらうことは、もうできない」



え……



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