やがて春が来るまでの、僕らの話。



「……」

「、…」



なにも会話のない沈黙が続いたあと、杉内くんが静かに呟いた。



「……昨日」

「…?」

「ごめんね…」

「、…」



やっと聞こえた声は、謝罪の言葉……


昨日のことも今日のことも、謝らなきゃいけないのは私なのに。

杉内くんは、なにも悪くないのに……



「私のほうこそ本当にごめんなさい…」

「……」

「杉内くん、私のせいで仕事、」

「あーーー!!クマさんクッソむかつくーーー!!!」

「!」



突然叫びだした杉内くんに、体がビクっと跳ねる。



「ね、めっちゃむかつかねぇ?俺らなんも悪いことしてねぇのにさ!」

「う、うん、」

「つーかもう頼まれてもあんな店戻りたくねぇーし」

「でも、」

「いい人だと思ってたのに。もっと早くにむかつくやつだって気づけてたら、あんな店紹介しないでハナエちゃん巻きこまなくてすんだのに」

「、」



私が巻き込んだ、はずなのに……


杉内くんの優しさに、胸が痛くて苦しくて、それと同時にまた救われる。



「どうする?」

「え、なにが……」

「俺ら無職になったじゃん?」

「うん……」

「とりあえず、飲みにでも行く?」

「……」

「よし、失業祝いしよー!」




杉内くんが笑うから、私もつられて笑ってしまう。




悲しいことが起きたって、



辛いことが起きたって、




私には笑える場所が、ちゃんとあるんだ……




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