やがて春が来るまでの、僕らの話。



「ねぇなんで2人が辞めなきゃなんないの。犯人、別にいるんでしょ?」

「…いるけど」

「だったら辞めるべきなのはそっちだろ、なんだよそれ、意味わかんねぇっ」

「、」


思わず興奮した俺を見て、ハナエちゃんの顔が俯いていく。

あれ、俺なんかまずいこと言った?



「リスクは避けたいって、言われたの」

「え?」

「身元がハッキリしない人間を雇うことは、リスクを背負うことになる、って」

「は?」

「店長が…」

「……」



腸が、煮えくり返りそうな感じ。

まじでそんな理由で2人が辞めさせられたのかって、意味がわかんなすぎて信じられない。


「私はいいの、今までもどうにか生きてきたから。でも杉内くんが、」

「いや、あいつのほうこそいいよ」

「え?」

「あいつならほっといても大丈夫。若いんだし、雇ってくれるとこなんていくらでもある」


もう辞めるってことが決まった以上、考えるべきは杉内のことじゃない。

あいつは多分、ほっといても自分で勝手に次の仕事を見つけるから。


考えなきゃいけないのは……



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