やがて春が来るまでの、僕らの話。







「え、彼女いないの!?」



結局みんなでご飯を食べて、暗くなった帰り道は若瀬くんが送ってくれた。


2人で歩く、夜の道。

雲が多かった空からは雨が降り出して、暗くなった今も降り続けている。


傘を買って、2人で入る1つの傘。


「いるわけねぇじゃん、彼女なんて」

「だってこの間、大学のときから付き合ってる彼女がいるって」

「あー、生徒にはそう言ってんの。彼女いないとか言ったらあいつらまじしつこいから」

「……。」

「だから学校では彼女がいる設定で通してんの」


歳が変わっても、若瀬くんのモテっぷりは変わってないんだな…。


「そっか、いないのか」

「うん」

「なんだ」

「なに、安心した?」

「は、なにが」

「なにがって、なんか安心したように見えたから」

「別に、してないけど」

「ふーん」


全然動揺も見せない若瀬くんは、さっきからずっと傘を持ってくれている。

歩く道の中、若瀬くんの左肩が濡れているのは、右にいる私を傘に収めるため。


そういう優しいところも、全然変わってないんだな……



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