やがて春が来るまでの、僕らの話。
「…もしもし?」
なにか急用でもない限り、こんな時間の電話はおかしい。
どうしよう、
怖い……
『んっふふー』
聞こえたのは、柏木くんの笑い声。
「柏木くん?」
『うぃーっす!ハナエさ~ん!』
「え、なに、酔ってるの?」
『ちげーっつーの!んふふー』
いや、絶対酔ってるし。
ていうかなに、こんな時間に酔っ払いって。
心配して怖かった自分が、バカみたい。
『お礼の電話をー、しようと思いましてぇ』
「お礼の電話?」
『そっ』
「お礼って、なんのお礼?」
『んー、あの町に転校してきてくれて、どうもありがとー!って』
「え、いつの話し、」
『ハナエが来てくれてからー、陽菜も志月くんも、すっげぇ楽しそうだったしー』
「……」
『俺も楽しかったしー』
「柏木くん、飲みすぎだよ」
『で、この街でまた俺らと会ってくれて、ありがとうございましたーって』
「なにそれ」
『んふふ。お陰でね、最後にいい思い出が出来ましたよーって』
「……」
最後…?