やがて春が来るまでの、僕らの話。



「…もしもし?」


なにか急用でもない限り、こんな時間の電話はおかしい。



どうしよう、



怖い……





『んっふふー』



聞こえたのは、柏木くんの笑い声。



「柏木くん?」

『うぃーっす!ハナエさ~ん!』

「え、なに、酔ってるの?」

『ちげーっつーの!んふふー』


いや、絶対酔ってるし。


ていうかなに、こんな時間に酔っ払いって。

心配して怖かった自分が、バカみたい。



『お礼の電話をー、しようと思いましてぇ』

「お礼の電話?」

『そっ』

「お礼って、なんのお礼?」

『んー、あの町に転校してきてくれて、どうもありがとー!って』

「え、いつの話し、」

『ハナエが来てくれてからー、陽菜も志月くんも、すっげぇ楽しそうだったしー』

「……」

『俺も楽しかったしー』

「柏木くん、飲みすぎだよ」

『で、この街でまた俺らと会ってくれて、ありがとうございましたーって』

「なにそれ」

『んふふ。お陰でね、最後にいい思い出が出来ましたよーって』

「……」




最後…?



< 378 / 566 >

この作品をシェア

pagetop