やがて春が来るまでの、僕らの話。


「明日から冬休みだね。お正月はどっか行ったりするの?」

「お正月はー……多分家にこもってます」

「そっか、そんなもんだよな」

「先輩はどこか行くんですか?」

「俺は毎年家族で温泉かな」

「温泉、いいですね!」

「そう?正月にでかけるのもしんどいよ」

「えー、でもいいですよ、温泉」

「家で家族団らんもいいじゃん」


俺のその言葉に、ハナエちゃんは少し眉を下げて笑った。


「団らんって言っても、家は二人しかいないから」

「え、そうなの?」


言ってはいけない言葉だったのかと一瞬焦ったけど、

ハナエちゃんが笑っているから、少しだけ様子を窺うことにした。


「お母さんと二人暮らしなんです」


お父さんは?って聞くのは、やっぱりまずいかな。


「じゃあ二人で引っ越してきたんだ?」

「はい」


お父さんは?なんて聞く勇気はやっぱりなくて、無難な言葉しか出てこない。


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