やがて春が来るまでの、僕らの話。



『お前はちゃんと、幸せになれよ』

「やめて、お願いだから、!」

『俺の分もさ、幸せになってよ』

「やめて、ほんとにやめてっ、!、…ッ、死んだら許さない、絶対許さないから!!!」

『んふふ。いーよ、許さなくて』

「やだ、…ッ、……やだ、……やだやだやだ、」

『泣くなって』

「やだ、死なない、で……ッ、…お願い、だから、……」

『んふふ』

「……今、…ッ、……から…行く、」

『ダメー』

「やだ…、…」

『わがまま言わないのー』

「やだ、……柏木、く…」



やめて……


お願いだから、…




『ねぇハナエー』

「、……ッ……」

『ずっとさー』

「、ッ、……」

『ずーっと、好きだったよ』




柏木くんの声が、優しくて…


まるで本当の最後みたいに、優しくて……



『高校んときから、ずっと』

「…ッ、」

『ハナエのことが、まじでずっと好きだった』

「…、……ッ…」




なんで今、そんなこと言うの……


ねぇ、なんで言うの…?




『今も、だけど』

「、……ッ、…」

『1回ぐらい、手とか繋いで歩きたかったな』

「、…」

『あー、高校んとき、1回繋いで歩いたか』

「…ッ、……」

『初詣行ったじゃん、二人で』

「……、」

『あんとき俺、すげー緊張してた』




もう声が出なくて……


苦しくて、…


声にならない息遣いしか、柏木くんには届かない……




『多分俺』

「、…ッ…」

『志月くんより先に、ハナエのこと好きだった』










電話は一方的に切られた。



陽菜の手紙と同じ、「バイバイ」って言葉を残して。




体が震えた。


怖くて震えた。




陽菜、



陽菜、



お願い陽菜……




柏木くんを、連れて行かないで……




< 380 / 566 >

この作品をシェア

pagetop