やがて春が来るまでの、僕らの話。
『お前はちゃんと、幸せになれよ』
「やめて、お願いだから、!」
『俺の分もさ、幸せになってよ』
「やめて、ほんとにやめてっ、!、…ッ、死んだら許さない、絶対許さないから!!!」
『んふふ。いーよ、許さなくて』
「やだ、…ッ、……やだ、……やだやだやだ、」
『泣くなって』
「やだ、死なない、で……ッ、…お願い、だから、……」
『んふふ』
「……今、…ッ、……から…行く、」
『ダメー』
「やだ…、…」
『わがまま言わないのー』
「やだ、……柏木、く…」
やめて……
お願いだから、…
『ねぇハナエー』
「、……ッ……」
『ずっとさー』
「、ッ、……」
『ずーっと、好きだったよ』
柏木くんの声が、優しくて…
まるで本当の最後みたいに、優しくて……
『高校んときから、ずっと』
「…ッ、」
『ハナエのことが、まじでずっと好きだった』
「…、……ッ…」
なんで今、そんなこと言うの……
ねぇ、なんで言うの…?
『今も、だけど』
「、……ッ、…」
『1回ぐらい、手とか繋いで歩きたかったな』
「、…」
『あー、高校んとき、1回繋いで歩いたか』
「…ッ、……」
『初詣行ったじゃん、二人で』
「……、」
『あんとき俺、すげー緊張してた』
もう声が出なくて……
苦しくて、…
声にならない息遣いしか、柏木くんには届かない……
『多分俺』
「、…ッ…」
『志月くんより先に、ハナエのこと好きだった』
電話は一方的に切られた。
陽菜の手紙と同じ、「バイバイ」って言葉を残して。
体が震えた。
怖くて震えた。
陽菜、
陽菜、
お願い陽菜……
柏木くんを、連れて行かないで……