やがて春が来るまでの、僕らの話。
【倉田side】
「…ん、…」
真夜中、何かが聞こえて目が覚めた。
さっきから、夢の中でもずっと鳴っているもの。
「なに、こんな時間に、…」
寝ぼけた頭に響くのは、ベッドの横に置いてある携帯電話。
どれだけしつこいんだってくらい、その音は長い間鳴っていた。
時計を見たら夜中の2時過ぎ。
起きた以上無視はできない性格だから、携帯を手に取ってディスプレイを確認。
『ハナエちゃん』
「え…」
真夜中に、突然の電話。
動揺が隠せなくて、一気に目が冴えた。
なに、こんな時間に……
すぐに頭に浮かんだのは、「何かあったのかも」ってこと。
だってこの時間の電話、絶対普通じゃない。
嫌な予感に息を呑んで、すぐに通話に切り替えた。
「もしも、」
『律くん、どうしよ、柏木くんが、…!』
「え、」
聞こえたのは、切羽詰まった彼女の声。