やがて春が来るまでの、僕らの話。
「律くんたち、来たの?」
玄関での騒動を聞きつけてか、杉内が部屋の中から顔を出した。
「え、ハナエちゃんっ、大丈夫!?」
駆けてきた杉内が、心配そうにしゃがみ込んで彼女の背中に手を添えた。
「ごめん杉内、ちょっとハナエちゃんのこと頼む」
「え、」
「カッシー、来て」
「は、?」
掴んだままのカッシーの手を強引に引っ張って、マンションの外に連れていく。
部屋着のままのカッシーは、とっさにサンダルをひっかけて着いて来た。
外はもう、暗い。
俺らの真上に、月が見える……
「なに、律くん」
なに、じゃねぇよ。
「なんか話し?」
話しなんかねぇよ。
「律くん?」
なぁカッシー。
お前、どこに連れて行こうとしてんの…?
あんな目で見て。
ハナエちゃんのこと、どこに道連れにしようとしてんだよ……