やがて春が来るまでの、僕らの話。
「なぁ、カッシー」
ポケットに手を突っ込んで、空を見上げた。
「もしさ」
隣にいるカッシーを見ずに、ただじっと、空を見上げる……
いつも、いつも。
小さい頃からいつも俺のあとを着いてくるこいつらに、俺はなにをしてやれてたんだろう。
なにをしてやれてれば、
こんな未来にはならなかったんだろう……
「もし陽菜が生きてたらって、考えたこと、ある?」
見上げる月がきれいすぎて……
不思議なほど、心は穏やか。
「もしも今ここに陽菜がいたらって、考えたって現実になんてなんないのに。それでも俺はよく考えるよ」
「……」
どんな風に成長して、
どんな髪型で、
どんな仕事をしてて、
どんな大人になっているのか。
そんなことを、よく考える……