やがて春が来るまでの、僕らの話。



「なに、陽菜の話しすんなら俺もう戻、」

「生きてるんだよね」

「……」


いつもいつも、俺の中の陽菜はそう。


「思い出す度、考える度。頭ん中で、陽菜は今も生きてる」

「……」



黙り込んだカッシーは、俺の隣で俯くように足元を見た。

その横顔は、大人になったカッシーの横顔なのに……

俺の目には、俺のあとを一生懸命ついてくる、ほんとに幼い、遠い昔のカッシーに見えた。



「なぁ、カッシー」



もう一度月を見上げたら、やっぱりまた、心は穏やか。


大事なもんを守らなきゃって、

俺が強くいなきゃ、なんにも守れないだろって。


そう思ったら、穏やかに笑えた……



「もしまた死にたくなったらさー」



そんな最悪な未来が、もしも俺たちに待っているんだとしても……


大丈夫、お前を1人になんかさせないから。




「俺が一緒に死んでやるから、安心しろ」




「、…」




だからなんも、心配すんな。




「そんときは一緒に、陽菜に怒られよーぜ」




月を見て笑う俺の横で、

弱っちぃ俺の弟が、静かに鼻をすすってた……



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