やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ちょ、誰」
「すっげータチ悪い」
「どっかのオカマじゃない?」
「「あー」」
カッシーの声に妙に納得して、律くんと2人で頷きあっていたら。
また。
ピンポンピンポンピンポン!!
ドンドンドン!!バンバンバン!!
「ちょ、カッシー早く出てやれって」
「やっぱ出なきゃダメなの?これ」
「だめだよ!みっちゃんカッシーにチューしそうなくらい心配してたんだから!」
「……は?」
俺の失言に、カッシーの青ざめた睨みが飛んでくる。
「あ、いや…でも大丈夫!志月くんが止めたし、未遂未遂!」
「……」
「未遂だってば!奪われてないから安心してって!」
チッって舌打ちをしたあと、カッシーは重い腰を上げて玄関へ向かった。
文句を言いながら歩くカッシーを目で追ったあと、視線を元に戻す。
その先では、ソファーの上の南波くんがうつ伏せに寝転んだまま、目の前のハナエちゃんの髪に手を伸ばしているのが見えた。