やがて春が来るまでの、僕らの話。
「サラサラ」
「わっ、びっくりした」
「ちょ、なに触ってんの!」
「目の前にサラサラあんだもん。触るしょふつー」
「触んないから」
「お?」
律くんにグイッと引かれ、ハナエちゃんの体は南波くんから離された。
だけどまだ懲りない男は天然なのか確信犯なのか、今度は匂いを嗅ぐためにハナエちゃんの髪に顔を埋めた。
「いー匂い」
「ちょっ、南波くん!」
「いーなぁ律くん。これ独り占めできんの?」
「は、」
「………」
独り占め?
え、なに、どういこと?
「もしかして……付き合、ってるの?」
俺の声に、3人の視線が同時に向いた。
向けられた視線の中で、答えを教えてくれたのは……
律くんでもハナエちゃんでもなくて、
教えてくれたのは、南波くん。
「んなの、見てりゃわかんじゃん」
は!?わかんねーし!
え、つーかまじで!?
なんで、いつから!?
「そういうわけだから、くれぐれも手ぇ出すなよ」
独占欲が強いのか、律くんはいつもより荒い口調で真剣に忠告してくる。
真剣……な、はずなのに。
「でも、人のもんになったらさ」
「……」
「なんか、燃えね?」
「……。」
忠告すらも忠告と捕らえない、南波くん。
そんな男の宣戦布告とも取れるタチの悪いその発言に、終止符を打ったのはハナエちゃんだ。
「ねぇ、柏木くんとみっちゃん、遅くない?」