やがて春が来るまでの、僕らの話。
言われてみれば、確かに。
あの2人、全然戻ってくる気配がない。
「チューでもしてんじゃない?」
「むしろこの長さ、押し倒されてるレベルじゃね?」
「どっちが?」
「そりゃ当然カッシーだろ」
カッシーが押し倒されている様を想像してみたら、それはもう、あまりにも哀れで……
「…ったく、しょーがねぇな」
立ち上がった律くんが、様子を見に玄関に向かって行った。
律くんってほんと世話好きっつーかなんつーか。
でもいいの?
ここにハナエちゃん置いていったら、また南波くんがなにするかわかんないよ?
「ねぇハナエちゃん」
うつ伏せだった体を今度は仰向けに変えて、南波くんは天井を見た。
「もしこれからさ、また辛いことがあったとき」
「……」
「そんときは、律くんだけじゃなくて俺らにも相談してね」
そっか、南波くんもハナエちゃんに頼られたいのかなって、そう思ったけど。
そんな俺の考えは、全然違って……
「全部はきっと、律くん1人じゃ背負いきれないから」
「……」
「俺らにも、ちょっとは分けてくれていーから」
「、…」
「そしたらきっと、律くんとハナエちゃん、ずっと一緒にいれっから」
なんでか、俺が泣きそうになった。
律くんの荷物を一緒に持とうとしている南波くん。
色んな人の色んな気持ちが伝わってきて、俺の目頭を熱くした……