やがて春が来るまでの、僕らの話。



言われてみれば、確かに。

あの2人、全然戻ってくる気配がない。


「チューでもしてんじゃない?」

「むしろこの長さ、押し倒されてるレベルじゃね?」

「どっちが?」

「そりゃ当然カッシーだろ」


カッシーが押し倒されている様を想像してみたら、それはもう、あまりにも哀れで……


「…ったく、しょーがねぇな」


立ち上がった律くんが、様子を見に玄関に向かって行った。

律くんってほんと世話好きっつーかなんつーか。


でもいいの?

ここにハナエちゃん置いていったら、また南波くんがなにするかわかんないよ?



「ねぇハナエちゃん」


うつ伏せだった体を今度は仰向けに変えて、南波くんは天井を見た。


「もしこれからさ、また辛いことがあったとき」

「……」

「そんときは、律くんだけじゃなくて俺らにも相談してね」


そっか、南波くんもハナエちゃんに頼られたいのかなって、そう思ったけど。

そんな俺の考えは、全然違って……


「全部はきっと、律くん1人じゃ背負いきれないから」

「……」

「俺らにも、ちょっとは分けてくれていーから」

「、…」

「そしたらきっと、律くんとハナエちゃん、ずっと一緒にいれっから」



なんでか、俺が泣きそうになった。


律くんの荷物を一緒に持とうとしている南波くん。

色んな人の色んな気持ちが伝わってきて、俺の目頭を熱くした……


< 423 / 566 >

この作品をシェア

pagetop