やがて春が来るまでの、僕らの話。
「…ちょっと、横になってもいい?」
「うん、どうぞどうぞ」
さっきまで南波くんが寝ていたソファーの上で、みんなに背を向けるように体を倒した。
わいわいと賑やかな中、律くんの声がたまにしか聞こえないのは、きっと私の傍にいてくれてるから。
そんな優しさを感じながら目を閉じて……
その目が自然に開いたのは、
それから2時間が経った頃だった……
「あ、れ…?」
目が覚めて時計を見たら、まだ夜の10時前。
だけど部屋の中はもう静かで、みんなは雑魚寝で眠っている。
そっか、昨日の今日で、みんな寝不足だったんだ。
「…柏木くん?」
部屋の中に、柏木くんだけがいないことに気がついた。
一瞬で、あの時の恐怖が蘇ってくる。
柏木くんが死んじゃう……
柏木くんがこの世界からいなくなる……
もう二度と、会えなくなる……
それが怖くて、
怖くて、…
立ち上がった足が、震えながら動き出す。
トイレもお風呂場もクローゼットも、全部開けてもどこにもいない。
なんで、
どこ、
やだ、…
やだやだやだ、…
柏木くん、
どこ…?