やがて春が来るまでの、僕らの話。



「送ってく?」

「あ、帰るとき律くんが迎えに来てくれるって」

「マメだねあの人も」


笑う若瀬くんは、やっぱりあの頃と違って大人。

シャツにカーディガンを着ている姿は、どこからどう見てもイケメンの教師。


若瀬くんは、どうして学校の先生になろうと思ったんだろう……


「ほんとはさ」

「?」

「ほんとは今日、話したいことって、カッシーのことじゃなかったんだ」

「え?」


カフェではほとんど柏木くんの話しかしなかったのに。

話があるって言っていたのは、そのことじゃなかったってこと?

外灯の下で立ち止まった若瀬くんが、私の方に向き直った。


「ごめん、なかなか言い出せなくて。往生際が悪いっつーか、言いたくなかったっつーか」

「……」

「でも律くんと付き合うんなら、やっぱちゃんとしなきゃなって」


なんの話なのか、全然わからなくて……

目が合わない若瀬くんを、私はじっと見た。


「本当は今日、けじめをつけにきたの」

「けじめ…?」


けじめって、なんの……


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