やがて春が来るまでの、僕らの話。



苦しいけど温かい。

そんな空気の中で、若瀬くんはスマホを取り出し誰かに電話をかけている。

拭う涙の先に聞こえるのは、電話で話す若瀬くんの声。


「律くん?ごめん、泣かせちゃったからすぐ迎えに来てやって。いや、なんもしてねーから」



涙が滲むまま空を見上げた。



どうしてかな。


陽菜が笑っている気がした……







迎えに来てくれた律くんの車に乗って、窓の外の景色をぼーっと見ていた。


車に揺られること約10分。

律くんはなにも聞いてこない。


若瀬くんとなにを話していたのか、どうして泣いていたのか。

なにも聞かない律くんの優しさに、また泣きそうだ。


これ以上泣かないようにもう一度空を見上げてみたら、


やっぱり陽菜が、笑ってた……



「カッシーと杉内、豚汁食ってた」

「……」

「具、超でかいの」


両手でハンドルを持って、前を見ながら律くんが笑ってる。


ねぇ律くん、どうしてかな?


陽菜が笑ってるよ……


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