やがて春が来るまでの、僕らの話。

<倉田side>



「花火大会?」


夜。ご飯も食べて風呂も入って、ビール片手にニュース番組を見ているとき、ハナエちゃんがその話を切り出した。


「花火大会、みんなで行けたらいいなーって」

「あー、もうそんな時期か」

「せっかくだし、みんなで行かない?」

「おー、いいね」

「ほんと?」

「うん、みんなで行こう」


深く考えもせず口にした答えに、よほど嬉しかったのかハナエちゃんは目を輝かせた。


「でも珍しいね、そういうイベントに食いつくの」

「あ、食いついたのは私じゃなくて杉内くんで、ほんとは2人で行こうって、」


余計なことを口走った。

そんな顔で、彼女の言葉はそこで止まった。


「えーと…」

「なに、杉内と2人で行く予定だったの?」

「…実は、律くんと付き合う前に杉内くんと約束してて」

「そうなんだ」

「…ごめんね?」

「え?」


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