やがて春が来るまでの、僕らの話。



なんでハナエちゃんが謝るのかって、一瞬思ったけど。

その真意はきっと、「彼女なのに他の男と約束してごめんね」ってこと。

でも俺と付き合う前の約束だし、相手は杉内だし、別に怒ったりしないのに。


「いいの?杉内と2人で行かなくて」

「え…」


ハナエちゃんの目が、驚くように丸くなった。

あ、今の発言は彼氏として変?

いやでも、杉内と約束してたなら、やっぱそっちを優先させるべきな気もするし。


「杉内くんと2人で行っても、怒らないの?」

「え、だって別に変なことしないよね」

「変なことって?」

「だから……手繋ぐとか、キス、とか」

「するわけないじゃん!そういうの、好きな人とすることでしょ!」

「そうだけど」


まぁ確かに、杉内が無理矢理……なんてことは絶対ないか。



「………ねぇ律くん」

「ん?」


ビールをグッと喉に流して、言葉の続きを待つ。

俺の横で視線を下げた彼女は、気まずそうに言った。



「…もしかして、私のこと軽い女だって思ってる?」

「……」



は?


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