やがて春が来るまでの、僕らの話。
「誰とでもそういうことする、軽い女だって、」
「いや、まったく思ってないけど」
「…ほんと?」
彼女の過去を知る人たちの中には、そう思う連中もいるかもしれない。
でもこれだけ近くにいたら、本質くらいわかる。
「思ったことないよ。1度も」
言い切ると、ハナエちゃんは安堵したのか視線と肩を下げた。
今さっき、手を繋いだりキスをしたり、そういうのは好きな人とすることだって、そんなことを全力で言う人間を軽いだなんて思うわけがない。
なんて。
そんなことを考えていたら。
頭の中で、閃いた。
「……」
「律くん?」
ここにきて、確かめたくなってしまった。
試したくなってしまった。
だから……ずるいかもしれないけど、ハナエちゃんの手を握ってみた。
「……」
「……」
ぎゅっと握られた手を見て、不思議そうに瞬きを繰り返す彼女と、
視線がぶつかった……
「…俺とは、してくれるの?」
「え?」
手を繋いだりキスをするのは……好きな人とすること。
そう、言ってたから……