やがて春が来るまでの、僕らの話。
「…俺とは、嫌じゃない?」
握る手の平が、緊張して熱くなる。
それでもずっと、離すことなく握り続けた……
「…嫌じゃ、ないよ」
「、」
やべぇ…
嫌じゃないよ、とか……やばいんだけど。
届いた声に誘われるように、手がハナエちゃんの頬に伸びていく。
逃げるわけでも嫌がるわけでもない彼女に、引き寄せられるように近づいて……
きっと俺たちは同時に目を閉じて、キスをした……
「………」
「、…」
目を開けながら、風呂上がりから肩に掛けていたバスタオルを静かに外す。
ハナエちゃんの目がそっと開いたのを確認して、俺は言う……
「…じゃあ、これも嫌じゃない?」
「え、」
彼女の言葉を封じるように、さっきよりも深いキスをした。
支えのない体が俺の示す通りに床に倒れていったのが、受け入れてくれてる証拠に見えて……
覆い被る俺の下で、彼女がまた目を閉じる。
何度も何度も唇を重ねて、頭がおかしくなりそうで……
もっともっとって、
このまま永遠にって、思うのに……
なのに……
頭の真ん中に聞こえたのは、
────“律くん…”
俺を呼ぶ、高校生のカッシーの声……