やがて春が来るまでの、僕らの話。
結局花火大会はみんなで行くことになった。
当日の空は雲1つない藍色で、花火のためにあるような夜空が広がっている。
待ち合わせ場所の駅前に、1番乗りで来ていたのは杉内くんだった。
「あ、ハナエちゃんおっつー!」
「杉内くん、早いね」
「無職だし?」
「あはは、無職2人が揃っちゃったね」
「やば、暇人って思われるから遅く来ればよかった!」
「確かに…。今から2人で隠れたほうが、」
「お、早いな2人とも」
私たちの計画を阻止するタイミングで現れたのは、南波くんだ。
Tシャツに膝丈デニムにサンダル姿の彼は、今日も指先が絵の具で染まっている。
「ビール飲みてぇなー」
「来て早々?」
「イカ焼きも食いてぇ」
「おやじかって」
花火が始まるまであと30分。
人混みに押されないように、身を縮めて皆を待つ。
「あ、やっだーん、ちょっと通して下さぁ~い」
人混みの中、聞き覚えのある声が聞こえた。
背の高い、派手な髪型が迫ってくる。
「あれ絶対みっちゃんだな」
「おお、しかも浴衣だ!」
人混みを掻き分けて現れたみっちゃんは浴衣姿。
男モノなのか女モノなのか、それがわからない独特な柄だけど。
でもとっても素敵だ。