やがて春が来るまでの、僕らの話。



「あ、律くんからLIMEだ」

「……!」


聞こえた声に、反射的に若瀬くんへ視線が向かう。


「え、律くん仕事終わらないから来られないって」

「まじで?」

「あら~、エリートサラリーマンはやっぱり忙しいのね~」



律くん、来ないんだ……



「仕事ならまぁ仕方ないか」

「しょうがない、俺らだけで行こっ」

「そうだね、行こ行こー」


ゾロゾロと歩き出したみんなの後ろを、ついていく。

一際目立つみっちゃんが、未だに若瀬くんの腕を掴んで先頭を楽しそうに歩いてる。

その後ろには、南波くんとむっちと杉内くんが3人で賑やかに歩いていて。



「……」



あれ……


あれ……?



柏木くん、は……



「お前、歩く気あんの?」

「、…」


隣から顔を覗くように、ポケットに手を入れた柏木くんが私を見てきた。


「なに、もしかしてこないだのことまだ怒ってんの?」

「こないだの……」



───”だったらもうほっとけよっ!!”

───”…それとも、一緒に謝る?”

───”向こうで一緒に……陽菜に謝る?”



記憶が廻りながらも、どうにか頑張って歩くけど。

人混みがすごくて、うまく波に乗れなくて……


みんながどんどん、先に行っちゃう。


< 454 / 566 >

この作品をシェア

pagetop