やがて春が来るまでの、僕らの話。
「聞いてる?」
「、…」
「おーい?」
「、」
賑やかな場所で、場違いに黙り込んでいたら……
先を急ぐ見ず知らずの人の肩が、ドン!って私にぶつかった。
何も言えない私の代わりに、柏木くんが謝ってくれたあと……
また、さっきみたいに顔を覗き込まれた。
「ハナエ?」
「、」
1度止まった足は、隣にいる柏木くんに動揺するように1歩も動けなくなってしまった。
足が動かない。
どう考えたってこんなところで立ち止まるのは邪魔なのに。
わかってるけど……
でも動かない。
だって無理だよ、柏木くんと2人で歩くなんて。
こんなの、陽菜が悲しむよ……
俯く中に聞こえたのは、はぁーって呆れるような柏木くんのため息。
そのため息の後、手首をグイッと掴まれて……
強引に、無理矢理歩き出す。
静かな場所を目指しているのか、人の流れに逆らうように進んでいく。
「、」
ちょっと……待って。
なにこれ、どこに行くの…?
やだ、怖い。
柏木くんと2人でいるのが、
2人になるのが、
怖い……