やがて春が来るまでの、僕らの話。



引かれる手を振り払うこともできなくて、柏木くんが進む方へ私の足も進んでいく。



「、…」



若瀬くんと話したときや、律くんの車の中で空を見たとき。

あのとき、陽菜は確かに笑っていたのに。

今、私の中にいる陽菜は、もう笑ってはいない。


ねぇ、やっぱり柏木くんと私が一緒にいると、陽菜は悲しい顔になるよ。



ねぇ……






柏木くんが、立ち止まった。

その場所は、静かでとても暗い公園だ。


離された手首が今更ジンジン熱くて、自分の手でぎゅっと握った。



「座れば?」

「……」


公園の入り口にある短い階段に、柏木くんが座り込む。

座れば?って見上げる視線に耐えられなくて、私も隣に座った。



「………」

「………」



何も会話がないから、胸がどんどん締め付けられて……

息をすることすら、なんだか苦しい。


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