やがて春が来るまでの、僕らの話。





<ハナエside>



「………」

「………」



何も会話なんてないまま、ただ2人で花火を見ていた。

夜空に打ち上がる花火はすごくきれいなのに、すぐに消えてしまうからなんだか切ない……



一瞬で消えてしまうから、

だから花火はキレイなのかな……



「…花火大会終わったら、夏も終わんのかな」

「、」



夏が……終わる。



「そしたら秋が来て」




秋の次は……




「…冬が来んのかな」


「、」




花火に照らされた柏木くんの横顔は、怖くて見れなかった。


どんな顔でその言葉を言っているのか、


どんな気持ちでその言葉を言っているのか、


考えるだけでも怖くて……



私はもう、この街で7回も冬を迎えているのに。

雪の降らないこの街で、いつも思い出すのは雪の降るあの小さな町のことだった。


頭の中で、胸の中で、記憶の中で。


ずっとずっと消えることのない雪が、今もずっと降り積もったままだから……


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