やがて春が来るまでの、僕らの話。






<柏木side>



律くんと話してくるって言って数十分が経った頃。

ハナエが俯きながら、俺の前に戻ってきた。


目を真っ赤にして、


鼻をすすって、


なんでか髪の毛もボサボサになって、


俺の前に、戻ってきた。



「ひでぇ顔…」

「、…」



存分に泣き終えてきたのか、その目からはもう涙は流れてなくて。

ただ腫れた真っ赤な目が、俺の足元をじっと見てる。


そんな顔されたら抱きしめたくなるなぁって……思うけど。


今はなんか、違う気がして。


抱きしめるのは、ダメな気がして……



一つ息を吐いたあと、ポッケに手を入れたまま立ち上がって、ハナエと同じ目線に立った。



「家、帰ろ?」



今はなにも話さずに、ただ2人で帰ればいい。


2人で一緒に……これからずっと、生きればいい。



きっと、それだけでいい。


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