やがて春が来るまでの、僕らの話。






「あ、おかえりー!」

「…なにしてんのお前。」

「あれ、ハナエちゃんも一緒だったの?」


リビングのドアを開けるなり、我が家状態でくつろいでいる男が1人。


「杉内くん、まだ柏木くんと住んでたんだ」

「縁起でもねぇ言い方すんな」

「合鍵持ってんだよ!ほら!」


杉内がチャリンっと掲げたのは、この部屋のスペアキー。

確かにそれは、俺が仕事に行くっつってんのにいつまで経っても居座るこいつに、仕方なく渡した鍵だ。


「返せ。」

「え、あーーー!」

「はいこれ。今日からハナエのね」

「え、」


奪い返したスペアキーを、ハナエの手の平に乗せた。


「ちょっと、俺のは!?」

「光男の家のでももらってくれば」

「だから俺、女の子のがいんだって!」

「いや、俺女の子じゃねぇし」

「、」



騒ぐ俺らのすぐ横で、ハナエがずっと立ち尽くしてる。

家に連れてきたはいいけど、遠慮するみたいに大人しい。


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