やがて春が来るまでの、僕らの話。

<杉内side>



カッシーの態度につられてふざけてみるけど、なにがどうしてどうなってるのか、俺には全然わかんない。

でも2人が一緒に住むってことは、律くんとハナエちゃんはダメになったってこと?


考えてもまったく訳がわかんないこの状況に、考えるのを即座にやめた。



「わかった、帰る」


言い切って、立ち上がって玄関に向かう。

何週間も勝手に居座っていたこの部屋に別れを告げて、しゃがみ込んで靴紐を結ぶ。


よし、久しぶりに我が家に帰ろう!


そう思ったけど。


玄関に座り込んだまま動きが止まったのは、急に怖くなったから。



「、…」


大丈夫、なんだよね?

この2人、置いて帰っても大丈夫なんだよね…?

このまま共倒れなんてこと、ないよね…?



「杉内」

「、」


見送りに来てくれたのか、カッシーが壁に寄りかかって座り込んでる俺を見た。

見上げたカッシーの口元が、少しだけ照れくさそうに笑ってるのは、気のせい…?


「今度、奢る」

「え、」

「色々世話になったし?」

「………」

「感謝の気持ちを込めて?」

「………」

「ビールでも、奢りやす。」


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