やがて春が来るまでの、僕らの話。
「柏木くん、コーヒー飲む?」
「飲む」
「淹れるからちょっと待っててね」
「うーい、サンキュー」
杉内の濃すぎるコーヒーともお別れかって、まともなもんを飲めることが嬉しかった。
つーかなんだ、これ。
なんで俺、こんな普通なんだろ。
昨日まで、朝の憂鬱がすごかったはずなのに。
むしろ24時間、ずっと死が付きまとってたはずなのに。
今もまだ、胸の奥を探せば憂鬱はちゃんと残ってるけど、それでも……
見える景色の色が、昨日よりも全然明るい。
今日を生きていけるって、そんな自身さえある気がする。
ハナエがここにいてくれるから…?
「あ、俺のコーヒー砂糖もミルクもいらねぇから」
「え、ごめ、」
後ろからハナエの手元を覗いたら、ミルクと砂糖を1個ずつ入れ終えたところだった。