やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ごめん、入れちゃった」
「つーかこれ、杉内のミルクと砂糖じゃん。持って帰れっつーのな」
「ごめんね、作り直す」
「あー、いーわ、これ飲む」
「、」
「あっち、」
コーヒーカップを持って、ハナエを残して立ち飲みしながらリビングに戻った。
「甘っ、お前いつもこんなん飲んでんの?」
砂糖が入ってるコーヒーは、ブラック派の俺にとっては甘すぎる。
笑いながらなんとなく振り向いたら、動かず立ち尽くしているハナエが見えた。
「どした?」
「、」
「ハナエ?」
「、…」
「…?」
杉内の濃すぎるコーヒーに、俺にも思い出があるように、
ハナエが淹れたこの甘いコーヒーにも、なにか思い出があんのかなって。
そんなことで痛む胸に、
憂鬱はいとも簡単に、舞い戻るんだ……