やがて春が来るまでの、僕らの話。

<倉田side>



ピーーンポーーン


花火大会から数日後の夜、突然、来客を知らせるチャイムが鳴った。



「はい」


深く考えずに開けたドアの先に立っていたのは……


「うーい」

「え、南波くん?」


立っていたのは、今日も絵の具で染まっている南波くんだった。


「何、どうしたの急に」

「これ、返しにきた」

「あ、もういいの?」

「うん、あんがと」


受け取ったのは、南波くんに貸していた”とあるもの”。


「上がってく?って言ってもなんもないけど」

「ビール買ってきた」

「お、まじ?」

「飲むべ」

「おう」


上がる気満々で来ていたらしい南波くんに笑いながら、部屋へ招く。

俺はそのままキッチンに向かって、棚から残り物のつまみを出した。

つまみって言っても、スルメしかないけど。


「はい、つまみ」

「おー、あんがと」


テーブルに適当に置いたそれを袋から出して、買ってきてくれた缶ビールのプルタブを開ける。

プシュッって音と同時に出てきたのは、大量の泡だ。


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