やがて春が来るまでの、僕らの話。
「本当はさ…」
南波くんになら話せる気がした。
唯一年上だからかな?
それとも、この人の雰囲気のせいかな……
「本当はむかついてるよ、カッシーのこと」
「………」
「だってそうじゃん。生きる為にハナエちゃんが必要とか言われたら、そんなのあいつの状況考えたら譲るしかないじゃん」
だからむかつく。
本気でずるいって思う。
きっとこれが、俺の一番の本音だ……
「…好きだったんだよ、まじで」
「………」
「ハナエちゃんのこと、本気で好きだった。今でもそれは変わらない」
ビールがジワジワ沁みてきて……
なんかほんと、こんな話をしてるとまじで泣きそうになる。
「だけどさ、俺にとってはハナエちゃんと同じだけ、カッシーのことも大事だから。……だからこれでいいんだって、思う」
「………」
「…ようにしてる。」
「んふっ」
笑う南波くんが1缶目を空にしたとき、俺はすでに2缶目を飲み終えるところで。
悪酔いしてるのか本音がポロポロ溢れて泣きそうになるのに、
全然止まんねぇのは、南波くんがなんにも言わないで聞いてくれるから。