やがて春が来るまでの、僕らの話。



「本当はさ…」



南波くんになら話せる気がした。


唯一年上だからかな?

それとも、この人の雰囲気のせいかな……



「本当はむかついてるよ、カッシーのこと」

「………」

「だってそうじゃん。生きる為にハナエちゃんが必要とか言われたら、そんなのあいつの状況考えたら譲るしかないじゃん」



だからむかつく。

本気でずるいって思う。


きっとこれが、俺の一番の本音だ……



「…好きだったんだよ、まじで」

「………」

「ハナエちゃんのこと、本気で好きだった。今でもそれは変わらない」



ビールがジワジワ沁みてきて……

なんかほんと、こんな話をしてるとまじで泣きそうになる。



「だけどさ、俺にとってはハナエちゃんと同じだけ、カッシーのことも大事だから。……だからこれでいいんだって、思う」

「………」

「…ようにしてる。」

「んふっ」



笑う南波くんが1缶目を空にしたとき、俺はすでに2缶目を飲み終えるところで。

悪酔いしてるのか本音がポロポロ溢れて泣きそうになるのに、

全然止まんねぇのは、南波くんがなんにも言わないで聞いてくれるから。


< 489 / 566 >

この作品をシェア

pagetop