やがて春が来るまでの、僕らの話。
「南波くん」
「ん?」
「俺は別に、人のことばっか考えてるわけじゃないよ」
「うん?」
「心ん中で思ってることなんて、まじでひどいから。カッシーに対してなんて、もう恨み妬みのオンパレード。いい奴ぶって大人ぶってるだけで、実際はいい奴でも大人でもなんでもないのな」
「………」
「頼られるように慕われるようにって、ずるく計算しながら生きてきたから。俺の本性知ったら、みんな一気に興冷めすんだろうなって」
みんなにバレるのが怖かったのかな。
ずーっといい兄ちゃんやってきたけど。
いや、いい兄ちゃんだったのか、今となってはそれすらわからないけど。
「でもなんか」
なんか、さ……
「もうみんな勝手にしろって、時々思うときがある」
酒を飲みながらいつまでもグチグチと、本音と弱音が零れ落ちる。
「最低だろ?表ではいい兄貴ぶって、内心はあいつらのこと見捨ててんの」
自分でも最低だってわかるけど。
これが俺の、本音だから……
それを吐き出した俺に、南波くんはなにを言うんだろうって、考えたとき。
南波くんの口が開いた……
「見捨ててみれば?」
「え?」