やがて春が来るまでの、僕らの話。
<柏木side>
「……ハナエ?」
真夜中、目が覚めて布団の中からベッドを見たら、そこで寝ているはずのハナエがいなかった。
胸ん中が一気に真っ暗な不安に襲われて、焦るように立ち上がった足はリビングに繋がるドアへ向かう。
「あ、柏木くん」
「、」
ドアを開けて見えた、暗闇の中。
窓に頬杖ついて外を見ていたハナエが、こっちに振り向くのが見えて……
安堵の息と一緒に、肩が静かに落ちてった。
「柏木くん?」
「……」
いなくなったんじゃないかって。
どっかに消えたんじゃないかって。
陽菜みたいに、俺の前から突然姿を消すんじゃないかって……
本気でそんなことを思う俺は、やっぱりどっかおかしいのかな。