やがて春が来るまでの、僕らの話。


二階からの階段を下りていくと、すれ違う生徒たちはみんな楽しそうな笑い声を響かせていて、きっと私だけが俯きながら歩いてる。

この学校にいつか馴染める日がくるのかなって、想像もできない未来を無理矢理想像してみたりした。


友達って、どうやって作ればいいんだろう。


「あ、スマホ忘れちゃった」


下駄箱まで来たところで、机の中にスマホを忘れたことに気づいた。

二階の教室まで戻るのは面倒だけど、スマホはなきゃないで困るから、下りたばかりの階段を仕方なくもう一度上っていく。


「はぁ……」


転校して一週間になるのに、スマホの登録は一つも増えていない。

季節外れの転校生のうえ驚くほどの人見知りも手伝って、友達が出来る気さえしない。


これから二年間、この学校でやっていけるのかな。

先行きが思いやられるな……。



「ねぇ、谷さんて暗くない?」


教室のドアを開けようとしたとき。

少し開いているドアの向こうから、女子たちの声が聞こえてきた。


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