やがて春が来るまでの、僕らの話。






「笑ってたね、陽菜…」

「………」



帰り道、真っ直ぐ帰る気にもなれなくて、柏木くんと公園に立ち寄った。

ベンチに座ってしばらく、魂を抜かれたように放心する私たちがいる。



「久しぶりに見たな、陽菜の顔…」

「……」

「あれからずっと、写真すら見てなかったから…」

「うん…」


私も同じ。

写真ですら、陽菜を見るのが怖かった。


「あいつ、あんな風に笑ってたんだな」

「うん…」

「あいつ、ちゃんと笑ってたんだな」

「…うん」

「あいつ……」

「、…」



言葉に詰まる柏木くんが、泣いているんじゃないかって思ったけど。


だけど……


柏木くんは少しだけ、気の抜けたように笑ってた。


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