やがて春が来るまでの、僕らの話。
<倉田side>
「寒っ…」
南波くんの個展から早四ヶ月。
相変わらず雪の降らないこの街で、今日も仕事を無事終えた。
二月の終わりでも外はまだ寒くて、マフラーに口を埋めてみるけどやっぱり寒い。
白い息を吐き出す寒空の下、信号待ちで立ち止まる。
寒いから早く青になれって祈る中、スマホの通知音が耳に届いた。
ポケットから取り出しスライドさせたディスプレイには、LIMEのマーク。
開いた画面には、一通のメッセージが表示されていた。
記されている差出人の名前は……
『カッシー』
「、…」
もう何ヶ月も会ってない。
連絡すらとってなかったその名前に、青信号の中いつまでも立ち止まってた……
───“見捨ててみれば?”
南波くんに言われた日から、俺は本当にあいつらを……
「、」
雑踏の片隅で、立ち尽くす俺の横を多くの人が通り過ぎていく。
喧騒すら掻き消す緊張の中、なにが書かれてるんだってメッセージを開いたら。
そこに書かれていたのは、たったの一行の文だった。
『陽菜の命日、みんなで帰ろう』